働く上の備えとして、しっかり考えておきたい「労災保険」。労災保険は基本的に、社員やアルバイトなどで「雇用されている人」(被雇用者)の労働時間や通勤中に起きたトラブルに備えるためのものであり、フリーランス・個人事業主のように「業務委託」で働く人は対象とされません。運送、配達など、他の業種と比べ事故リスクが高い仕事を業務委託で受けている人は、「なにか労災保険に加入しておきたいけれど、どうすればいいのだろう」とお困りではないでしょうか。
実は、世情の変化に伴い、労災保険の対象となる職種は増加しています。フードデリバリー配達員もそのひとつです。そこで今回は、業務委託の方々に対する労災保険、「労災保険特別加入制度」について詳しく解説していきます。
まず、基本的な労災保険についてご説明します。労災保険とは、「労働者災害補償保険法」という法律に基づく国の制度です。業務中や通勤中の災害に対して保険給付や労働者、その遺族などの援護を行い、労働者の福祉を増進することを目的としています。被雇用者は、正社員、アルバイト、パートタイマー、契約社員、派遣社員、日雇い労働者など、雇用形態にかかわらず原則強制加入です。
しかしながら、この対象には業務委託によって働く人たちが含まれていません。そこで制定されているのが、「特別加入制度」という、いわば拡大枠とも言うべきしくみです。労災保険自体は共通した制度ですが、雇用されている人にとっては強制保険、フリーランス・個人事業主など業務委託で働く人にとっては任意保険となります。
特別加入制度は、雇用されていない労働者であっても、業務の実態や災害の発生状況を鑑みて労災保険で適用するのがふさわしいと考えられた人々については、労災保険に加入できるという決まりに基づく制度です。具体的には、次のような方々となります。
・中小事業主等
・一人親方等
・特定作業従事者
・海外派遣者
加入対象者の範囲は徐々に広がっており、たとえば2018(平成30)年4月からは「介護作業従事者および家事支援従事者」、2021年(令和3)年4月からは「芸能関係作業従事者」や「アニメーション制作作業従事者」、「柔道整復師」など、同年9月からは「自転車を使用して貨物運送事業を行う者」と「ITフリーランス」が追加されています。つまり、ウーバーイーツ、出前館、ウォルトなどなどのフードデリバリー配達員も、特別加入制度を利用すれば労災保険に加入できるようになったのです。
一般的に、労災保険に加入するためにはいずれかの「労働保険事務組合」に所属することになります。労働保険事務組合とは、労災保険に加入するための手続きをサポートしてくれる団体のことです。運送業・配達員の労働保険事務組合はいくつかありますが、FinFinからおすすめするのは「一人親方労災保険組合」の「一人親方労災保険」です。
「一人親方労災保険」とは?
一人親方労災保険組合が提供する労災保険「一人親方労災保険」は、特別加入制度のうち「一人親方等」に該当する方々が加入できる労災保険です。「一人親方」は建設業における個人事業主を指しますが、ここに運送業の人や配達員も含まれます。
一人親方労災保険に加入できるのはどんなひと?
「一人親方労災保険組合」は、下記のように説明しています。
①他人の需要に応じて、有償で貨物(飲食物や日用品)の運送をする仕事を行っている。
②会社に雇用されず、請負や委託で仕事を行っている。
③特定の会社に所属しているが、その会社と雇用関係になく、配達パートナーとして仕事を行っている。
④グループで仕事をしているが、お互いに雇用関係にない。
⑤法人の代表だが、労働者は使用していない。
自転車又は原動機付自転車(125cc以下)による運送…フードデリバリーなど
貨物軽自動車運送業の届出をし、軽自動車または二輪車による運送…宅配など
一般貨物自動車事業の届出をし、自動車による運送…トラック・バンなど
有償運送の許可を得て、自家用バイクによる運送…バイク便など
引用:一人親方労災保険組合
なお、一人親方労災保険の保険料は社会保険料控除の対象となります。確定申告時にしっかりと記入して、節税に役立てましょう。また、入会金と組合費は日々の仕訳で経費計上することができます。FinFinから加入した場合には入会金がかかりませんが、組合費についてはFinFinで経費(勘定科目は「諸会費」などが妥当)として登録してみてくださいね。