収入を増やす手段のひとつとして、自宅や所持している土地などに設備をつくって行う「太陽光発電」があります。電気を売って得るお金も「収入」となるものですから、税金がかかるかどうかの判断はきちんと行わなくてはなりません。太陽光発電で収入を得ている人は、インボイス対応、つまり課税事業者としての登録が必要になるのでしょうか。詳しく解説します。
インボイス制度とは
インボイス制度については、太陽光発電に限る制度ではありません。個人事業主の方はまずこちらをご一読ください。
「もうすぐ始まるインボイス制度!改めて概要を説明します」
まず、ご自身が会社員で、太陽光発電による収入が副業などにあたる場合について考えてみましょう。会社員の給与は「給与所得」となり、それ以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要です(退職所得を含む)。一般的に、太陽光発電による「売電収入」は年間7~8万円程度となっており、他に給与所得・退職所得などがなければ、確定申告をする必要はありません。
ただし所得が20万円以下であっても住民税の申告は必要になります。お住まいの市町村に確認のうえ、手続きを行うようにしましょう。また、会社員の方がご自宅に設置した太陽光発電設備から生じた電気の余剰売電の収入については、基本的には消費税の課税の対象外と考えられます。したがって、消費税の申告は不要です。
年間の売電収入20万円を超えており確定申告をすることになる場合、ご自身が暮らす家に発電設備を設置しているのであれば「雑所得」、賃貸物件などに発電設備を設置しているのであれば「不動産所得」として計上します。
個人事業主の場合には、事業所得など他のすべての所得と控除額を含めて計算し、所得税がかかる場合には確定申告と納税が必要になります。なお、事業として太陽光発電を行う場合には、必ず「事業所得」として計上してください。賃貸物件や別に所有する土地に発電設備を設置しており、かつ、それが賃貸物件などで利用されず販売を目的とするものだけであれば、おのずと事業所得と判断されます。
また、事業として太陽光発電の売却を行う場合は、所得区分にかかわらず消費税がかかる取引に該当します。したがって、太陽光発電による収入を課税売上として計算したうえで消費税の納税義務の判定や、納める消費税額を計算する必要があります。
一般的には、ご自身の家庭で太陽光発電の余剰売電(太陽光発電による電気を自宅で利用し、その余りを売却する)で収入を得ており、現在納税義務のない方は、インボイス制度の登録は不要で、消費税を納める対象となりません。
資源エネルギー庁から「FIT認定事業者」(※)に対し、インボイス登録を案内するはがきが送付されていましたが、現在はホームページにおいても『※消費税を申告・納付していない方(免税事業者)は、インボイス制度に関する対応は不要です。インボイスの登録がなくとも、現行の買取価格が変更されることはありません』としています。
※「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」において認定された事業者。太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなど、再利用可能エネルギー現を用いて発電された電気について、一定期間は国が定める価格で電気事業者が買い取りすることを義務づけた制度(「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」=FIT制度)に登録、電売をする人のこと。
参考:資源エネルギー庁「なっとく再生可能エネルギー FIT・FIP制度」(2023年9月時点)
問い合わせ先
太陽光発電とインボイス制度について不安な点があれば、下記に問い合わせしましょう。
再エネ特措法(FIT・FIP制度)及び再生可能エネルギーに係る支援制度に関するお問合せ窓口
電話0570-057-333 一部のIP電話でつながらない場合は044-952-7917
50kW未満太陽光発電設備の認定申請についてのお問い合わせ先
JPEA代行申請センター(JP-AC)
電話0570-03-8210(問い合わせ方法は電話のみ)
事業を行っていても、一般家庭に発電機を設置している、あるいはそのレベルの規模であれば、これまで税金を支払ってこなかった方が税金を支払う必要はなく、インボイス登録をする必要もありません。さまざまな情報が飛び交っていて混乱しますが、慌てて不要な登録をしてしまわないようにしましょう。
また、インボイス登録のない一般家庭の消費税については、電気を買い取る電力会社が負担することになります。そのため、一般家庭側の負担増はありません。この点につきましてもご安心ください。
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通信会社でシステムエンジニアとして働くが、結婚を機に退職。その後約10年間、中小企業の経理職や税理士事務所で働き、2023年に個人税理士事務所を立ち上げる。税務業務を中心にお客様のサポートをしながら、2 人の娘を育てるママ税理士。