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2022.11.19 確定申告

遺産の不動産賃貸料で生計を立てていても、確定申告は必要?

遺産の不動産賃貸料で生計を立てていても、確定申告は必要?

とくに不動産の売買は行っていないけれど、不動産を他人に賃貸することで収入を得て生計を立てているといった場合、確定申告は必要なのでしょうか?
不動産賃貸料による「不動産所得」は、それが副業(1か所のみの給与所得者)の場合、年間20万円を超えた時点で確定申告の義務が発生します。つまり、「生計を立てることができている状態」であるのなら、基本的には確定申告が必要だと考えるべきでしょう。

この記事では、不動産貸付業の不動産所得による確定申告について詳しくご説明します。特に「遺産を相続したばかりでよくわかっていない」という方は、一度しっかりと確認してみてください。

確定申告の義務が生じるのは、それが副業で不動産所得20万円以上の場合

「不動産収入」とは、土地や建物を他人に貸し出すことによる収入をいいます。ここから必要経費を差し引いたものが、「不動産所得」です。それが副業(1か所のみの給与所得者)の場合、この不動産所得が年間20万円を超えたときには、確定申告の義務が発生します。収入と経費をきちんと計算しなければ確定申告の義務があるかないかも確認できないため、まずは収支計算を行ってみてください。

冒頭で示したように、「不動産収入だけで生計を立てることができている」のであれば、確定申告が必要である可能性は高いでしょう。不動産所得が20万円以上あるのに確定申告をせず、それが税務調査などで発覚した場合、本来の金額分を納税しなければなりません(追徴課税)。さらに、延滞税や利子税など、税額が上乗せされる危険性もあります。

不動産所得20万円以下でも確定申告をしたほうがいい場合

今回のケースにはあてはまりませんが、「不動産賃貸業が赤字」であり、「不動産賃貸業の収入以外に本業の収入がある」というケースであれば、不動産賃貸業の赤字と本業の利益を相殺する「損益通算」が可能です。この損益通算にも確定申告が必要ですので、「不動産所得が20万を超えない場合にも確定申告をするほうが有利」ということになります。
ただし、不動産所得の損失のうち、土地の取得のための借入金利子に相当する部分がある場合は、生じなかったものとみなされ、他の所得との損益通算ができませんので注意してください。

なお損益通算については、青色申告でなく白色申告についても可能です。

不動産所得が「事業的規模」であればさらに特典がある

もちろん、不動産賃貸による収入で生計を立てている場合も、青色申告は可能です。「事業所得」については「所得税の青色申告承認申請書」を管轄の税務署へ提出することにより事業者とみなされ、青色申告を行うことができます。

青色申告の場合、事業的規模の場合の青色申告特別控除は65万円、事業的規模以外の青色申告特別控除は10万円受けられます。事業的規模であるか、そうでないかの基準は、以下のように定められています。

【事業規模の基準】
・貸間、アパートなど……独立した室数が約10室以上
・独立家屋(一軒家)……おおむね5棟以上

参考:No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm

なお、駐車場の場合には50台以上分とされています。「アパートと駐車場」など、不動産の種類が混在する場合もその合算で判断されます。基準以下であっても収入の規模によっては事業的規模とされる場合もあり、税務署への確認が必要です。
事業的規模とみなされ青色申告が可能となると、次のようなことが認められるため、非常に大きな節税効果を期待できます。

・最大65万円の所得控除を受けられる
・家族を従業員とした場合(青色事業専従者)、給与を経費として計上できる(ただし、事業的規模の場合には、白色申告の場合でも事業専従者控除の適用が可能)
・賃貸物件の借主から回収できなかった賃料をその年に経費として計上できる(事業的規模でない場合は、過去に遡って「更正の請求」の手続きが必要になります)
・建物の損失があった場合、損失を経費として3年間にわたって繰り越し計上できる(事業的規模でない場合はその年のみで繰り越せない)

事業的規模の場合、「個人事業税」が発生する

税制的にメリットの多い事業的規模ですが、その場合は個人で事業を行う際にはかからない「個人事業税」が発生します。名称に「個人」と付いていますが、あくまでも法人ではないという意味なので気をつけてください。個人事業税は、確定申告時に所得税申告書第二表「個人事業税に関する事項」に記載することで、自動計算されます。所得税などと異なり、個人事業税の全額を経費として計上することが可能です。

【不動産所得 事業的規模の個人事業者税】
個人事業税額 =( 所得金額 − 事業主控除290万円 ) × 不動産貸付業の税率(5%)
※上記の事業税の計算においては、「所得金額」に青色申告特別控除が適用されないため、その分を足し戻す必要があります。

※不動産貸付業は法定業種の第1種事業となります。税率は大きく第1~3事業に分類され、それぞれに税率が定められています。

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まとめ
規模の大小にかかわらず不動産貸付業を行っている場合、基本的には確定申告の義務があるか、義務がなくとも確定申告していたほうが税務的に有利であると考えたほうがよいでしょう。遺産の場合はとくに収支の全容把握が重要です。漏れなく申告するために、まず所有している不動産の賃貸契約状態を確認し、不明な点があれば税理士などにも相談しましょう。基本的には「相続税」が発生する時点で、ここまで進めておくことをおすすめします。