節税になる「医療費控除」は知っていても、「病院にお世話になっていないから自分には関係ない」と考えている方は多いと思います。しかし、医療費控除には特例として「セルフメディケーション税制」という制度があり、通院や入院をしていなくても風邪薬や胃薬などの医薬品を購入していれば減税ができる可能性があります。
セルフメディケーション税制の対象となる医薬品であることや、健康診断を受けているといった条件もありますが、「薬代なら家族を含めて1年間にざっくり12,000円は超えているかもしれない」という場合には、まずこちらの記事をお読みください。いままでにはできなかった節税ができるかもしれません。
目次
セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)は、医療費の所得控除の特例として開始された制度です。「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる一定の医薬品、及び、その他の対象の医療品を購入して所定の方法で確定申告すると、所得控除を受けることができます。期間は現在のところ平成29年度から令和8年度までとなっています。
この制度では、その年内に対象の医療品の払いの合計額が税込み12,000円を超える場合、その超えた部分の金額(保険金などで補填される部分を除く)が総所得金額等から控除され、減税されるというしくみです。最大で88,000円までが控除され、この金額を超えた場合にも88,000円となります。
参考資料:
厚生労働省 セルフメディケーション(自主服薬)推進のためのスイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)の創設 より引用
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000895388.pdf
では、セルフメディケーション税制による減税を受けるための詳しい条件などを見ていきましょう。
セルフメディケーション税制による減税を受けられるのは、「対象となる医療品を購入した個人」ですが、その前提として「健康の維持増進および疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人」であることが必要になります。取組とは、下記のようなものです。
①保険者(健康保険組合等)が実施する健康診査【人間ドック、各種健(検)診等】
②市区町村が健康増進事業として行う健康診査
③予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】
④勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】
⑤特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
⑥市区町村が健康増進事業として実施するがん検診
※国税庁 令和5年分確定申告特集 セルフメディケーション税制とは より引用
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/self-medication.htm
これらの取組のいずれかを行っていない場合には、対象の医療品を購入してもセルフメディケーション税制による減税を受けることができないということになります。
ただし、あくまでも確定申告をする本人が取組を行っていれば問題なく、その家族についての取組の有無は問われません。取組をしていることが証明できるもの(健康診断結果の書類など)は保管しておく必要がありますので気を付けてください。
平成29年の制度開始当初、セルフメディケーション税制の対象となる医薬品は「スイッチOTC医薬品」と呼ばれるものの一部のみでした。要指導医薬品及び一般用医療品のうち、医療用から転用された医薬品であり、具体的には、風邪薬、胃腸薬、鼻炎用内服薬、水虫・たむし用薬、肩こり・腰痛・関節痛の貼付薬などが含まれます。
しかし、令和4年1月以降、対象となる医療品の範囲は拡大され(制度自体も5年延長)、スイッチOTC医薬品のみならずさまざまな医療品がこの制度の対象となっています。対象の医療品かどうかは、次のような方法で確認しましょう。
購入する前に確認したい場合、医療品の外箱に「セルフメディケーション税制対応」の表示があるかどうかを確認してください。
【セルフメディケーション税制識別マーク】
購入後に受け取るレシートには、セルフメディケーション税制対象医療品にマーク(★など)が付けられています。
厚生労働省がリストにしておりますので、こちらを確認するようにしましょう。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html
こちらのページの「セルフメディケーション税制対象品目一覧」から最新のものをDLするようにしてください。
これらを購入した証明が必要となりますので、領収書・レシートは必ず保管しておきましょう。なお、確定申告後も5年間はご自宅での保管が必要です。
セルフメディケーション税制による減税を受けるためには、確定申告を行う必要があります。ただし、診察料や入院費などによる現行の医療費控除との併用はできないため、注意が必要です。
しかし、もし「通院もしているが市販の薬もよく買っていて、どちらがお得になるかわからない」という場合には、どちらを選ぶべきなのでしょうか。
現行の医療費控除においては、年間の医療費や医療に関係する初期費用から保険などでまかなわれた金額を差し引き、10 万円と総所得金額等の5%相当額のいずれか低い方を超える部分の金額が所得控除されます。この控除金額と、セルフメディケーション税制による控除金額を比較し、控除額が多いほうを選択することで、より多くの減税を受けることができます。
少し手間はかかりますが、通院の医療費と市販の医薬品の金額の合計を出してみるようにしてください。マイナンバーカードを健康保険証として利用されている方は、政府が運営する「マイナポータル」で診療・薬剤情報の確認が可能です(医師に処方された薬剤はセルフメディケーション税制対象となりませんのでご注意ください)。
なお、セルフメディケーション税制は、現行の医療費控除と同じく、確定申告をする人の家族も対象となります。「生計を一にしていること」が条件であり、同居している配偶者が扶養家族でない場合にも、問題ありません。
確定申告においては、医薬品購入費の領収書・レシートの内容をまとめた「セルフメディケーション税制の明細書」を添付する必要があります。領収書・レシートの原本を添付・送付する必要はありません。手元で5年間保管するようにしましょう。
セルフメディケーション税制の明細書(詳しい入力方法は2枚目をご確認ください)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/pdf/ref2.pdf
セルフメディケーション税制の明細書は、プリントアウトして所轄の税務署に提出する、または、e-taxで提出することが可能です。
ご自身の確定申告に合わせて実施してください。
セルフメディケーション税制は、日々の医薬品購入を通じて節税ができる制度です。病院を利用することがなくても、市販の医薬品を利用する機会が比較的多い方やそのご家族は、ぜひ活用していただきたいものです。年末に向けて医薬品購入費の領収書・レシートがたくさんたまっていきますが、ご家族の分も含め、管理を忘れないようにしましょう。
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1980年鳥取県米子市生まれ。約8年の税理士事務所での勤務経験を経て、2019年東京都府中市で天野大税理士事務所を開業。雇わない・雇われない働き方「ひとり税理士」。 小規模法人やフリーランス・個人事業主の税務を得意とし「ビジネスを通して社会を元気にする」を理念にスモールビジネス専門の税理士として活動中。