最近は働き方も多様化し、副業を行う会社員の方も増えてきました。副業である程度収入を得られるようになると、気になるのが「税務的にはどうなるのか」ということです。とくに、いずれは副業を本業にしたいと考えている方や、本業と副業を変わらない比率にしていきたい方などは、より税務的に有利となる開業届を提出しての「事業化」についても気になるところではないでしょうか。
この記事では、副業をしている方の税金に関することと、事業化とそのために必要な開業届についてご説明します。
目次
まず、税務上「事業」として取り扱われる副業の規模について押さえておきましょう。以前は「所得20万円超」といった税務的な目安がありましたが、2022年に国税庁が定めた規定により、これは通用しなくなっています。「副業収入が本業収入の10%未満」の場合や、「毎年赤字(概ね3年程度)」の場合は個別判断となり、事業として認められる可能性は低くなります。
また、事業とする場合には原則として帳簿書類の作成が必要です(ただし、帳簿書類を作成していなくても副業の収入金額が300万円を超える場合は概ね事業として取り扱われます)。
【事業とみなされるかどうかの基準】
・帳簿書類がある
・副業収入が本業収入の10%以上
・帳簿書類がなくとも、副業の収入金額が300万円を超える
なお、事業でない副業については、確定申告で「雑所得」として申告する必要があります。雑所得で申告するよりも事業所得で申告するほうが税務上のメリットは大きく、「もう少しで副業の収入が本業の10%以上になる」という方は、今後の働き方次第で事業にすることを目指してみるのもよいでしょう。白色申告での処理も可能ですが、青色申告のほうがメリットは大きくなります。
所得税の確定申告を「青色申告」で行うと、次のようなメリットがあります。ただし、会社員の場合はデメリットもありますので、よく考える必要があります。青色申告をするためには、「開業届」の提出と「所得税の青色申告承認申請手続」を行ってください。
メリット
複式簿記が必要になりますが、条件を満たすことで年間最大65万円の「青色申告特別控除」を受けることができます。また、損益通算ができる(損益通算については白色でも可)、事業による赤字を3年間繰り越して節税を行うことができるといったメリットもあります。
デメリット
会社員でありながら会社を辞め、(メインの勤め先を失うという意味で)失業しても、「失業手当」が受けられなくなる、という大きなデメリットが発生します。また、青色申告を行うことでメリットは増えますが、手間が増えて本業に差し支えてしまう可能性も否めません。副業から本業に切り替える予定であったとしても、よく状況を考慮して判断したほうがいいでしょう。
なお、「白色で確定申告していたので開業届は出していない」という方もいるかと思います。今日から事業を始めよう!という明確なスタートがなく、気づけばある程度稼いでいた……というケースです。このような事業者に対しても、罰則などはありませんのでご安心ください。ただし、開業届は出しておいたほうが事業を進めやすくなる可能性がありますので、しっかり検討するようにしましょう。
青色申告には「開業届」の提出が必要です。開業届は誰でも提出することができます。国税庁ホームページ「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」から、開業届のフォーマットを確認してみましょう。なお、開業届が提出できる会計ソフトなどもあります。
引用:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/05.pdf
届け出のため書類は、国税庁ホームページからダウンロードするほか、税務署でも入手することができます。記入して税務署に郵送したり、持ち込んだりしての提出が可能です。また、e-Taxでも提出ができます。すでに確定申告でe-Taxを活用している方は、ぜひ確認してみてください。
開業届を出さなくても事業の継続はできますが、継続的に事業を行っている場合は基本的に提出しなければならないものです。しかし、副業の範囲で働いているという方にとっては、そもそも「これは事業を行っていると言っていいのか?」という加減がわからず、開業届だけでなく、事業に関する手続きをしないままに過ごしてしまいがちです。あらためて、会社員で副業をしている方は「自分は副業でどれくらいの収入を得ているのか」を確認し、開業届を出す状況かどうかを把握するようにしましょう。
個人事業主の確定申告は、会計アプリを使ってスマホで済ませるのがおすすめです。
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1979年愛知県岡崎市生まれ。約10年の税理士事務所での経験を経て、2023年4月埼玉県越谷市にて独立。医業・飲食業・輸出入・小売業・卸売業・IT関連・不動産・イベント制作・各種サービス業、医療法人・一般社団法人・NPO法人等、多様な業種・形態の決算・申告を経験。「経営者が本業に集中できる環境を提供する」「お客様の事業が発展することで間接的に社会貢献する」ことを理念に掲げ活動中。