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アナウンサー・岸田さんの青色申告チャレンジ第5回【事業主勘定科目を理解!実現主義か、現金主義かを選択】

アナウンサー・岸田さんの青色申告チャレンジ第5回【事業主勘定科目を理解!実現主義か、現金主義かを選択】

あけましておめでとうございます!新しい年が始まり、より確定申告を意識しはじめたというフリーランスの方々もいるのではないでしょうか。いざ申告を、というときに困ることがないよう、確認を進めていきたいですね。

フリーアナウンサーの岸田さんがチャレンジする青色申告チャレンジ。昨年12月に行われた第5回目は、税理士の宮﨑先生から個人事業者独特の科目である「事業主貸」「事業主借」といった勘定科目について教えていただきます。また、売上の計上に欠かせない「実現主義(発生主義)」「現金主義」についても理解を進め、どちらかの方法を選択することになります。

年末になるとよく耳にする「節税対策」、どう考えるべき?

岸田さん(以下敬称略):
先生、年末入ってからちょっと気になったことが……。「節税」って具体的にどんなことをしたらいいんでしょうか。最近よく聞くんですよね。年内のうちにパソコンを買っておくといいとか、経費を使っておいたほうがいいとか?

宮﨑さん(以下敬称略):
確かに気になりますよね。ただ、節税するためにも「仮にいまのままだと、どれくらい税金を納めることになるか?」という予測ができていないと、節税の効果が薄くなるケースがあります。自分が支払う税金の額がおおよそいくらくらいになりそうか計算してみることって、とても大事なんです。そうなると、年間の売上の把握もしなくちゃなりません。経費もですね。まずは事業会計の全体を見ましょう。節税はその次のステップかな?

岸田:
そうですね……。まだ私は全体が見えているとは言えません(笑)。

宮﨑:
まずは売上と経費、つまり、だいたいの課税所得を把握して、バランスを見て節税をするのがいいかなと思います。もし売上が上がったとしても、そのぶんコワーキングスペースを契約したり、サブスクリプションのサービス利用機会が増えたりしたら「固定費」は増えていますよね。「わあ、意外と経費を使っているんだなあ……」という感じになる可能性が大きいんです。そういったことを確認してから、税金についての対策を練りましょう。

岸田:
なるほど。売上アップが必ずしも節税の必要性に繋がるわけじゃないってことですね。

宮﨑:
はい。集計が終わらない時点では、どの程度の節税対策をすればいいのかもわからない状態ですしね。それに、「節税」というより未来に向けた「投資」と考え、来年はどんなふうに事業を進めていこうかと計画した上で、必要なパソコンや備品が買えたらいいんじゃないかと思います。

岸田:
そっか……もっと早く考えておけたらよかったなあ……。

宮﨑:
考えるきっかけになれば十分ですよ。開業してすぐ節税まで考えられるフリーランスや個人事業主はなかなかいませんし、お金の管理や把握が必要なことを理解できれば、そのために会計ソフトを使ってみる、ということにも考えが及びます。それはとてもいいことだと思いますしね。

岸田:
最近は経費をすぐにスキャンするクセをつけたので、来年はもう1月からすぐにやっていきたいですね!

宮﨑:
すばらしい!そういう習慣がついていると、費用の予測がしやすいと思います。いい感じで進められそうですよね!

個人事業者だけが使う勘定科目、「事業主借」と「事業主貸」

宮﨑:
この時期に気を付けておきたいことと言えば、「源泉徴収票」です。岸田さんには、給料として受け取る給与所得と、個人で獲得した仕事の報酬として受け取る事業所得がありますよね。給料の場合は「源泉徴収票」、報酬の場合は「発行した請求書や支払調書」をしっかり保存しておいてください。

岸田:
はい!源泉徴収票は会社から送られてきたら保管しておきます!お給料の金額も毎月FinFinに入力しますか?

宮﨑:
給料や源泉徴収の金額はFinFinに登録せず、確定申告書に直接入力することになると思います。ここで問題なのが、給与はFinFinに登録しないのに、報酬と同じ口座に給与が振り込まれてしまうと、通帳の残高と会計上の最終金額が合わなくなってしまうということです。

岸田:
確かにそうですよね。確定申告書に直接入力する分と重複しちゃいますし……。でも、実際に同じ口座に給与や報酬が振り込まれるわけで、どう処理したらいいですか?

宮﨑:
そのために「事業主勘定」という科目があります。事業主勘定には「事業主借」と「事業主貸」の2つがあって、アプリに登録した情報と、通帳の残高を合わせるという目的を持つものです。給与が事業の口座に入ったら、それはプライベートなお金として考えてください。

事業主借

事業主の立場としてプライベートの個人から「借りている」お金とする科目
【お金の動き】「事業用の口座・財布」から、「プライベート用の口座・財布」に

事業主貸

事業主の立場としてプライベートの個人から「貸している」お金とする科目
【お金の動き】「プライベート用の口座・財布」から、「事業用の口座・財布」に

岸田:
あ、なるほど。給与は、帳簿上では「事業のお金」じゃなくて「個人のお金」ということにするんですね。

宮﨑:
そうです。すると、「事業」の視点からは「個人からお金を借りている」ということになる。ここで使われるのが、「事業主借」のほうですね。

岸田:
借りたお金が入ったことにすれば、通帳と残高が合いますね!

【給与20万円が、事業用の口座に振り込まれた】

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
普通預金 200,000円 事業主借 200,000円 給与

宮﨑:
はい。そうすると、ひとつの口座でも管理できることになります。事業で使うお金が足りなくて、個人のお金を口座に入れたときなども「事業主借」の科目で処理します。それから、個人のお金で事業の経費を使ったときにも、「事業主借」ですね。

【事業資金として、個人のお金を事業用の口座に15万円預け入れた】

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
普通預金 150,000円 事業主借 150,000円 事業資金

【事務用品(15,000円)を個人のクレジットカードで購入した】

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
消耗品費 15,000円 事業主借 15,000円 事務用品立替払い

逆に、事業の口座から生活費としてのお金を引き出したときには、事業からすると個人に貸したことになるから……。

岸田:
「事業主貸」になりますね!事業用の口座のお金は減るけれど、事業のお金として使ったわけではない、ということがわかります。

宮﨑:
そうです、正解!

【生活費(18万円)を事業用の口座から引き出した】

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
事業主貸 180,000円 普通預金 180,000円 生活費

宮﨑:
個人のものを事業のお金で買ったときもこうなります。できるだけ避けたいことだけど、間違えたり、個人のお金がなかったりしたらないことではないですからね。

岸田:
──そっか!いまやっとピンと来たんですが、この事業主貸と事業主借での処理をできるだけしなくて済むように、事業用の口座と個人用の口座を別にするといいんですね?

宮﨑:
そうです!もちろんひとつの口座でも事業主貸と事業主借を使えば問題ないけれど、処理は増えてしまいます。だから、できれば別の口座にしてほしいんですね。

岸田:
なるほど。いままで教えていただいたことと繋がって、なんだかとてもしっくりきました。

宮﨑:
この科目を使うと、「家事按分」もできるけど、どういうことかわかるかな?

岸田:
はい!事業用の経費ではない割合のお金は、個人で使ったものとする=「事業主貸」ということですね。すごく理解しやすくなりました!

【事業口座から引き落とされる家賃(10万円×12ヶ月)のうち、96万円(8万円×12ヶ月)を事業主貸とする】

借方科目 金額 貸方科目 金額
地代家賃 1,200,000円 普通預金 1,200,000円
事業主貸 960,000円 地代家賃 960,000円

※家事按分をした後の金額だけを計上する場合は、このようになります。
【事業で利用している部分(2万円×12ヶ月)を地代家賃として計上する】

借方科目 金額 貸方科目 金額
地代家賃 240,000円 普通預金 240,000円

宮﨑:
さて、さきほど触れた源泉徴収の仕訳も確認しておきましょう。源泉徴収税は事業経費ではなく個人として支払うものなので、「事業主貸」になります。

【消費税込みの売上「11万円」が、源泉徴収されて事業用の口座に振り込まれた】

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
普通預金 99,790円 売上 99,790円 取引先○○(など)
事業主貸 10,210円 売上 10,210円 源泉徴収

【消費税込みの売上「11万円」が、源泉徴収されてプライベート用の口座に振り込まれた】

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
事業主貸 99,790円 売上 99,790円 取引先○○(など)
事業主貸 10,210円 売上 10,210円 源泉徴収

実現主義(発生主義)と現金主義、どっちを選ぶ?

宮﨑:
さて、いよいよ売上の仕訳を行うとして、売上には「実現主義(発生主義)」と「現金主義」があります。どちらを選ぶこともできますよ。

岸田:
どんなふうに違うんですか?

宮﨑:
まず、実現主義から説明しますね。お仕事が終了した日が8月31日、入金が9月25日だったとして、この「お金を受け取る権利」が発生した日に売上として計上するのが、実現主義です。ここで使う科目は「売掛金」になります。お金を受け取ると、「お金を受け取る権利が消える」と考えるとわかりやすいんじゃないでしょうか。

岸田:
つまり、請求書のほうに合わせた計上のタイミングですね。

【8月31日】

借方科目 金額 貸方科目 金額
売掛金 11,000円 売上 11,000円

【9月25日】

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 11,000円 売掛金 11,000円
(売掛金の消滅)

宮﨑:
そうです。そして現金主義にはこの「売掛金」という考え方がありません。お金を受け取った時点で計上するので、科目としてはこんな感じになりますね。

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 11,000円 売上 11,000円

岸田:
仕訳が1回で済むことになるんですね?こっちのほうが簡単に見えます!

宮﨑:
そうです。12月だけ売掛金で計算しなくちゃいけないですが、手間は少なくなるかと思うので。

岸田:
あ!1月に回したらだめなんですね?つまり、12月だけは実現主義になるってことかな……。帳尻を合わせなくちゃいけないってことですもんね。

宮﨑:
そうです。このどちらを選ぶかはもうご本人のキャラクターによります。また、取引先ごとに実現主義現金主義かを変えるなど、併用することもできます。併用する場合、年末年始の決算整理は実現主義に合わせてFinFinに登録をする必要があるので、そこは注意してくださいね。

岸田:
わかりました。年末年始だけ要注意、と。

宮﨑:
さて、ここまで理解した状態で、岸田さんはどちらを選びますか?

岸田:
そうですね……私は現金主義のほうがいいかな?フリーで収入を得ている部分がそこまで大きいわけではないですし。取引先がたくさんあるので、全部を売掛と振込で仕訳を行うのは大変かなと思いますし。

宮﨑:
はい、私も現金主義でいいと思います。原則としての実現主義が頭に入っていれば大丈夫。では、報酬の振込があった時点で売上として計上する方法で進めていきましょう。

岸田:
わかりました。では、普段は現金主義で。12月分だけ実現主義で!

次回、「現金主義」で売上を入力

実現主義と現金主義を学び、その結果、現金主義を選んだ岸田さん。次回は実際に振り込まれたお金を売上として計上するための入力を行います。これで、売上と経費が一通り把握でき、自分の事業の規模を具体的に知ることに。確定申告本番にもぐっと近づきました!

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