フリーアナウンサーの岸田さんがチャレンジする青色申告チャレンジ、第1回目のスタートです。
岸田さんは確定申告の経験がゼロではないものの、いままでは白色での申告でした。今年は青色申告を行うべく、税理士の宮﨑先生にお話しを伺いながら、青色申告の準備を進めます。
目次
岸田さん(以下敬称略):
私はこれまでずっと白色で申告してきたので、青色申告には初めて挑戦することになります。講義で話を聞いていても、「自分だけでしっかり準備できるのかな?」と心配で……。ですので、こんなふうに先生と一緒に進められるのがとてもありがたいです。改めて、なぜ青色申告をしなくちゃいけないのか、というところもお尋ねしたくて。
宮﨑さん(以下敬称略):
一番言われるのは「節税ができる」ということですが、実は「事業に関するお金を管理しやすい環境を整える」というのが重要なところです。青色申告で65万円控除を受けるためには、そのときの預金残高や、これから「売掛金」や「買掛金」など、「掛け」という未来のお金の動きも管理できる。そうすると、自分の収入をこまめに把握でき、税金も「これくらいの金額なんだな」と予測しやすくなります。
岸田:管理しやすいんですね?「青色申告は複雑」という印象が強くて、管理しにくいものかと思っていました。逆なんだ……。
宮﨑:そういう印象を持ってもしかたないかなと思います。でも、「面倒=管理しやすい」なんですよ。数字や情報が整えられているからこそどれくらい利益が出ているか計算しやすいし、その利益をベースに確定申告時にどれくらい納税するかも、概算で出しやすくなる。どこになにがあるかわからなかったら、そういうことはできないですから。
岸田:確かに!面倒の次にちゃんとメリットがあるんですね。
宮﨑:そうです。面倒だからと言って日々の会計を放置してしまうと、「さて税金はどれくらいかな?」となってもわからないし、それこそ「ふるさと納税」のように所得によってどれだけ節税できるか違うものは、計算ができない。あくまでも、この管理のメリットと65万円控除の両方を合わせて、青色申告がおすすめだとお伝えしています。10月頃までに概算の収入や経費を計算しておくといいよ、とか言ったこともですね。
岸田:節税だけじゃないんですね。がんばっていきたいと思います!青色申告に必要な「開業届」と、「所得税の青色申告承認申請書」も提出しました。インターネットで簡単にできる!と思っていたので、カードリーダーも手元になくちょっと大変な目に遭いましたが(笑)。すぐに友達に借りることができて、事なきを得ました!
宮﨑:それはよかった。3月15日になっていざ青色申告をしたいと思っても、事前に申請をしておかなければ申告はできません。その場で申請許可が下りるものでもないから気をつけたいですね。
青色申告に必要な手続き
・「開業届」(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出
・「所得税の青色申告承認申請書」の提出
提出方法
税務署持ち込み、郵送、インターネット(e-Tax)
期限
青色申告をしようとする年の3月15日まで。ただし、その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合、及び不動産の貸付けをした場合には、その事業開始の日(非居住者の場合には事業を国内において開始した日)から2ヶ月以内の提出が必要です。
宮﨑:さて、ここからは「管理」を意識してお話を進めてみましょうか。現時点で「管理」って、できていますか?
岸田:現時点でできているとは、ちょっと(笑)。私は本業と副業の収入を同じ口座に振り込んでもらっていて、区別できていないんです。これが「管理できていない」状況ですね、まさに。確定申告は副業についてだけ申請すればいいのかなと思っていましたし。
宮﨑:同じように考えている人は多いでしょうね。確定申告は、事業によって出入りするお金のすべてを全部合わせて計算し直すのが目的です。複数の場所から収入を得ている人はみなさん確定申告が必要ですね。計算し直してみて、税金を支払いすぎていることがわかれば、還元を受ける必要があります。
岸田:「事業とプライベートを分けて考える」というのも理解できていませんでした。となると、以前先生にアドバイスいただいた「口座を分けて管理する」というのがいいこともわかる気がします。いまは全部まとめているので、どれがどれかがわかりにくくて。
宮﨑:そうですね。なんのお金かわかりやすくするために、「プライベートなお金」と、「副業を含めた事業のお金」は別の口座で管理するようにしましょう。個人的な収支は税務署に申告する必要がありません。必要なのは事業に関わる部分だけ。その必要な部分をピックアップする作業を少しでもラクにするのが目的です。
岸田:わかりました!まず私がやるべきことは事業用の口座を開設すること。それから、クレジットカードも別々のほうがいいんですよね?私はいま個人用のもので事業用のものを買ってしまってることになるから……。
宮﨑:理想はそうです。でも、クレカで決済する頻度が高くなければ大丈夫。その場合、個人のクレジットカードを使ったら、それを「プライベートなお金で購入した」ということで記録してください。そうすると、事業用の口座から引き落としがあるわけではないから混乱しません。そのあとの仕訳で事業用の経費として処理すればいいだけですから。
岸田:なるほど!私はそんなにたくさんクレジットカードを使うことはないので、少し様子を見ても問題ないかもしれないですね。将来的にはつくったほうがいいかもしれないですが。
宮﨑:そうです。もし事業用のクレジットカードをつくることになったら、会計ソフトと連携させると管理がとても簡単になります。この時点で、さっき言ったような「現金での入力」をしてしまうと情報が重複してしまうので気をつけてください。つまり、この場合はもう手入力したりレシートをスキャンしたりしない、ということですね。
宮﨑:さて、さっそくですが実際に作成することになる確定申告の「第一表」を見ながらお話していきましょうか。これが頭に入っているだけでこれからの理解がしやすくなるので。どうですか、いま見てだいたい理解できますか?
岸田:いえ、いまのところわかっているとは言いにくいです……。
宮﨑:大丈夫。ちょっとずつ覚えましょう。さきほどもお伝えしたんですが、収入と支出を再計算、もっと言えば「再清算」するのが確定申告の目的です。だから、給与としてもらったお金、事業で稼いだお金など、すべてを一度合算する必要があります。それらの収入を書き込むのが、「①収入金額等」の欄です。事業収入以外の「給与」や「雑所得」などの金額も入力します。
宮﨑:収入から経費などを差し引いた「所得」がその下の「②所得金額等」です。ここで「収入」から経費などが差し引かれ、「所得」が計算されます。税金の計算の元になる部分ですね。
そして、「②所得金額等」からさらに社会保険料や生命保険の掛け金を差し引くことができます。それが「③所得から差し引かれる金額」です。
岸田:「生命保険料控除証明書」に書かれた数字を入力する欄ですね。
宮﨑:そうです。「③所得から差し引かれる金額」でもっとたくさん差し引いて節税しようと思うなら、「ふるさと納税」や「iDeCo」などを利用します。医療控除や基礎控除もここに含まれます。学生さんなら勤労学生控除、扶養する家族がいる人は扶養控除など、それぞれ自分が該当する入力項目を理解しておく必要があります。ここはライフステージの変化に伴って見直す必要がありますね。
岸田:以前、医療費がかなりかかったことがあったんですが、「これは医療費控除の対象になるのかどうかわからないな」というものがあって……。歯列矯正なんですが。
宮﨑:それが「美容」じゃなく「治療」であれば大丈夫。医師に必要だと言われた治療なら、医療控除の対象になります。税金の計算をしなおして多く納めすぎていた場合は「更生の請求」というものができるのですが、これは5年遡ることができるので、領収証があれば見てみるのもいいかもしれません。
岸田:見てみます!「③所得から差し引かれる金額」の欄は、これまでもどこになにを入力するかがわかりにくくて困りました。どの書類を取っておけばいいのか、その書類がいつごろ送られてくるのか、これから覚えていく必要がありますね。
宮﨑:そうですね。なくさないように取っておかなくちゃ。そして、もうひとつの提出書類、「所得税青色申告決算書」を作成していくと、残りの部分も埋っていきます。青色申告による65万円控除なども、決算書から反映されるのでここで入力する必要はありません。決算書についてはまた少しずつ理解していけば大丈夫。
岸田:よかった!全部を自分で入力するわけじゃないんですよね。アプリに入力していくと、決算書にも反映される…という仕組みなわけで。
宮﨑:そうです。少し説明すると、「所得税青色申告決算書」とはこういうものですが……。
宮﨑:経費の種類が並んでいますね。第一表になかった細かい項目が、こちらでわかります。
岸田:各月の売上もここに表示されるんですね。第一表では1年分まとまっていましたが。青色申告特別控除額の計算はここにありました!
宮﨑:そうです。全部で4ページあって、減価償却が必要な設備を購入した場合やお金を借りた場合など、事業に関するお金の動きをすべて記録することになります。それが、第一表のそれぞれの項目に紐づけられていて、自動入力されていくんですね。
岸田:改めてアプリの有難さがわかります!これを自力でやるなんて考えられない……。
宮﨑:ええ。これはもうアプリに頼りましょう(笑)。第一表と決算書、この2つの書類を作成してe-Taxで送れば確定申告の完了です。あとは書類を保管しておけば問題ありません。紙で提出する場合は控えを送って税務署の印鑑をもらう必要がありますが、電子の場合、確定申告をしたという証明書が必要になったときに「電子申告証明書」をDLすれば大丈夫です。
岸田:わかりました!
宮﨑:どうですか?①から③までの引き算が理解できれば、かなりこの表が理解できたことになりますが…。
岸田:はい、以前教えていただいたことが改めて理解できて、繋がってきました!
宮﨑:よかったです!具体的な作業についてはこれから学んでいきましょう。
岸田:作業については、とにかく「すぐにやろうとしてもできない」ということだけは確かですね。確定申告に向けて、日々の準備が必要だと言われる理由がとてもよくわかりました。
宮﨑:そうですね。次は領収書を整えたりする具体的な作業を進めていきましょう。これにもコツがあります。申告書のどこに入る数字を準備しているのかがわかるので、もっと理解が深まりますよ。
第1回の今日は、青色申告に必要な準備を確認し、申告書の基本を知ることができました。岸田さんもいままでより申告書を理解でき、ちょっとすっきりした様子。今後もさらに確定申告の理解を深めていきます!
次回はアプリに売上や経費を入力する方法や、紙の書類の管理方法などを学びます。
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