いよいよ本格的な冬が到来し、確定申告シーズンが始まりました。確定申告の準備がまだだという方も、今から始めれば間に合います。今回は確定申告そのものではなく、その準備段階にチェックすべき事柄や知っておいた方がよい知識など、ナツキさんの疑問や実体験も交えて解説していきます。
個人事業主は事業年度が1月1日~12月31日と決まっていますから、もちろん決算は年末となります。この決算において予想よりも利益が大きかった場合、備品の買い替えを検討してみてもよいでしょう、と宮﨑先生から提案がありました。
「通常、備品を購入した場合は減価償却という形で毎年少しずつ経費計上するのですが、青色申告の特典の一つとして、30万円未満の備品は購入にかかった全額を経費計上できるというものがあります。つまり12月時点で利益が思ったよりも大きかった場合、備品を購入して経費計上することを検討してもよいでしょう」
20万円のノートパソコンを現金で購入して、この少額減価償却資産の特例を使う場合は、仕訳はこのような形になります。
借方 | 貸方 | |||
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購入時 | 備品 | 200,000円 | 現金 | 200,000円 |
減価償却時 | 減価償却費 | 200,000円 | 備品 | 200,000円 |
ちょうどパソコンが壊れたばかりだというナツキさんは、「ちょうどいいタイミングですね!」と喜んでいました。ただし、ここで大事なのは、「仕事のために使う」備品でないと経費計上できないという点です。
個人事業主は仕事とプライベートの線引きがあいまいになりがちですが、プライベートのみに使用するパソコンを費用計上するのはNGです。たとえば事業に関わっていない家族のパソコンを費用として計上することは認められません。
また当然ながら12月31日までに購入しなければ、その事業年度の費用として認められません。また購入が12月でも12月中に使用していなければ、その年の費用にはならないというルールです。利益が余ったから使わなくても購入しておこう、という形では経費として認められませんので、注意しましょう。
確定申告に備えて、経費の見直しをする方も多いかもしれません。ここでナツキさんから、ある質問が出ました。「この間、仕事に生かすために、あるセミナーを受けるため北海道に行ったんです。その交通費や宿泊費、セミナーの受講料は経費として認められるのでしょうか?」
「そのセミナーがどんな風に事業につながっているか、ちゃんと説明できれば大丈夫です」と宮﨑先生。ナツキさんはそのセミナーで学んだ内容や得た人脈を仕事に生かしています。その経緯を聞いて、「それなら大丈夫ですよ」という結論になりました。
「ただし、遠方で開催されるセミナーに参加する十分な理由がなければ、経費とは認められない可能性があります。たとえば、個人事業主同士の集まりを色んな地域で行い、そのついでに観光を楽しんでいる場合、観光のために遠出しているとみなされるかもしれません。観光はプライベートの楽しみですから、そのお金を経費にしようとするのはもちろんダメですよ」
ここで悩むナツキさんから「一つ一つ、経費かどうか考えるのは大変ですね……」という弱音が飛び出しました。
「経費なのかそうじゃないのかは、基本的には一般常識に照らし合わせて考えればOKです。仕事にかかったお金だから大丈夫、と思えるのであれば、経費として申請していいんですよ」
宮﨑先生が語っているように、間違いなく経費だと思えるお金を経費申請すれば、基本的にOKです。また、確定申告間際に大量のレシートを仕分けるのは大変ですから、この青色申告チャレンジの第2回でご紹介したように、毎月の作業を欠かさないようにしましょう。
参考:ナツキさんの青色申告チャレンジ第2回【フリーランスの青色申告はレシート整理から!】
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、自分で運用して資産を形成する年金制度です。積み立てたお金を、定期預金や保険商品、投資信託などで運用し、運用結果の金額を60歳以降に年金として受け取ることができます。
引用:iDeCo公式サイト
個人事業主にとってのiDeCoはどうなのでしょうか?という話題になったところ、「投資については税理士それぞれの考え方があり、正解はありませんが」という前置きの上で、宮﨑先生の考えを語っていただきました。
「私としては、個人事業主の方もiDeCoを検討した方が良いと思います。iDeCoは節税できるという面が注目されがちですが、実は投資の一種だという点が注目するべきポイントだと考えています。商品次第ではインフレで積立額が増えたり、逆に元本割れしたりと、年金保険と投資信託を足して二で割ったような機能なので、投資のきっかけとして最適です」
iDeCoは掛け金の上限が被保険者の形態によって決まっており、厚生年金に加入していない個人事業主の方は月額6万8千円と会社員よりも上限が高く設定されています。元本割れのリスクもありますが、将来的なインフレなどを考えると将来の年金や貯蓄のためにも投資の重要性は大きく、一度は検討してみるべきでしょう。
iDeCoのメリット
・掛金が全額所得税控除の対象
・運用で得た利益や利息に税金がかからない
・積み立てたお金を受け取るときにも控除を受けられる
iDeCoのデメリット
・積み立て金は60歳にならないと引き出せない
・損をする、元本割れの可能性がある
・加入時や運用時などに手数料がかかる
iDeCoに似た制度として、NISAがあります。NISAは少額からの投資を行う方のための非課税制度で、「一般NISA」と「つみたてNISA」の二種類があります。詳細な解説はここでは省きますが、こちらも将来の投資手段として有益です。
今回は確定申告の準備編のため、確定申告そのものの手続きではなく、確定申告周りで知っておくと役立つ知識などを中心にお伝えしました。次回は、確定申告書のフォーマットが去年とどのように変わったかや、今年から課税事業者になった方向けに、確定申告(所得税申告)と消費税申告をどう進めていけばよいか、などをお伝えします。
個人事業主の確定申告は、会計アプリを使ってスマホで済ませるのがおすすめです。
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