パート・アルバイトで働いていると、「103万円の壁」や「150万円の壁」といった言葉をよく耳にします。収入が増えると納める税金も増え、最終的に受け取る額面が減ってしまう「稼ぎ損」を避けるためのボーダーを、「壁」と表現しているのです。「自分はどの壁の中にいて、どのように考えればいいのかよくわからない」という方は、まずそれぞれの壁の違いを確認しておきましょう。この記事では、扶養内で働く人にとっての「収入の壁」について解説します。
目次
配偶者や家族の扶養内でパート・アルバイトをしている人は、年間103万円以上の収入を得ると「所得税」を支払う義務が発生します。「住民税」についても同様ですが、こちらは数千円程度です。この「所得税が発生しない収入の上限」が「103万円の壁」です。103万円の内訳は基礎控除の48万円と、給与所得者控除の55万円。その合算こそが103万円なのです。
なお、この103万円の壁には、自身の税金だけではなく、世帯主の税金(配偶者控除や扶養控除)にも影響します。以下の「150万円の壁」の部分も参照してください。
ご自身が103万円の壁を超えていないかどうかを調べるには、1月から12月の給与を合算し、交通費などの手当てを差し引いた金額が103万円より多くないかを確認しましょう。複数のアルバイトやパートをしている場合は、そのすべての給与を合計してください。
103万円の壁以外によく言われるのが、「106万円の壁」と「130万円の壁」、そして「150万円の壁」です。順番にご説明します。
【106万円の壁】
勤務先の社会保険に入らなければならない年収です。106万円には交通費が含まれます。ただし、勤務先の従業員数が101人以上で(2023年10月より。2024年は51人以上に変更予定)、週20時間以上働いており、月収にして88,000円以上の場合となります。つまり、勤務先の会社の規模によって該当するかどうかが変わります。
【130万円の壁】
夫の扶養(社会保険上の扶養。後述します)から外れなければならない年収です。130万円には交通費が含まれます。社会保険上の扶養から外れると、自分で社会保険に入る必要があり、保険料の支払いが発生します。勤務先の規模などは関係なく、すべての人が対象です。この場合、月々の負担は増えますが、年金の受給額は増えるというメリットがあります。
【150万円の壁】
配偶者の給与収入が150万円以下の場合は、最大38万円の控除を受けることができます。これが「配偶者控除」あるいは「配偶者特別控除」です。裏を返せば、配偶者の給与所得が150万円を超えると、控除を受けられなくなるのです。。
なお、年収103万円以下までは「配偶者控除」が適用されますが、103万円を超えると「配偶者特別控除」となり、妻の年収が多いほど受けられる控除の額は変わります。また、夫の年収にも上限の設定があり、38万円満額適用は900万円以下の場合です。金額は比較的頻繁に変更されるため、注意してください。
参考:No.1195 配偶者特別控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
「扶養に入っている」という言い方がありますが、扶養には2種類あります。「給与の額面が103万円までの収入」であれば、個人で所得税を支払う義務が発生しない、「税務上(所得税法上)の扶養」です。
一方、社会保険上の扶養は、夫の収入で生活が成り立っており、見込み年収が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)の場合を指します。「130万円の壁」においてご説明した扶養は、この社会保険上の扶養を意味します。
一般的に「扶養に入っている」という言い方をするときには、保険証の問題もあって社会保険上の扶養(つまり「130万円の壁」)であることが多いでしょう。細かい規定については下記を参考にしてください。
参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)被扶養者とは?
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3160/sbb3163/1959-230/
収入が130万円や150万円を超え、税金や社会保険の支払い条件が変わっても、勤務先が年末調整をしてくれる場合には確定申告は不要です。年末調整がない場合には、自分で確定申告を行う必要があります。また、複数のパート・アルバイトを掛け持ちしている人、年の途中で辞めた人なども、確定申告をする必要があります。
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まとめ
冒頭でご説明したような「働き損」は避けたいものですが、「もっと働きたいのに収入の壁によって制限されていて、コントロールが難しい」という人は、いっそのこと壁を大きく超える働き方に変えてみるのも一つの方法です。たしかに税金の支払いが発生しますが、収入自体を増やすことによって負担の感じ方は変わってきます。税金の金額だけにとらわれず、ご自身やご家族の状況、将来的な計画を考慮しながら、働き方・稼ぎ方を模索していきましょう。