今年も確定申告の時期がやってきました。みなさまはもう準備を進めていますか?これからだという方も、まだまだ時間がありますので、焦らずじっくり備えていきたいものですね。
さて、個人で事業を行っている方が所得税の確定申告を行うと、源泉徴収された所得税のうち、払いすぎた分が戻ってきます。これを「(所得税の)還付金」と呼びますが、これはいつ受け取れるものなのでしょうか。個人事業主が確定申告後に受け取る還付金について、改めて確認していきましょう。
目次
個人事業主は次のようなケースで還付金を受け取ることができます。
・日々の取引において源泉徴収をされている報酬の支払いがある
・予定納税を行い、払いすぎた税金がある
・確定申告を行い、払いすぎた税金がある
・損失の繰り戻し還付の請求を行った
「源泉徴収をされている」とは、請求書を作成する際に「源泉徴収税」の金額を記載しており、報酬を受け取る時点で所得税が引かれている場合を指します。また、「取引先Aからは源泉徴収されていないが、取引先Bからはされている」といったように、全部の取引において源泉徴収されていなくとも、合算して払いすぎた分があれば還付金を受け取ることが可能です。
還付金は確定申告を行ったあとに振り込みで受け取ることができます。ただし、確定申告の方法によって時期に差が出ます。下記はその目安です。
・確定申告を書類で提出した場合(税務署への持ち込み、郵送など)
……1カ月~1カ月半程度
・確定申告をインターネットで行った場合(国税電子申告、納税システムe-Tax)
……3週間程度
なお、2024(令和6)年分を確定申告する場合、確定申告の期間は2月17日(月)から3月17日(月)となります。もしもっとも早く還付金を受け取りたいと考えるのであれば、2月17日に国税電子申告かe-Taxで確定申告を完了させれば、その2~3週間程度には還付を受けられる可能性があります。ただし、混雑具合にもよりますのでそれよりも時間がかかる場合があることは頭に入れておきましょう。還付金を近日中の支払いにあてることはおすすめできません。
なお、還付申告であれば令和7年2月14日(金)以前でも可能ですが、処理が開始されるのは2月17日(月)です。それまでは税務署が預かっているだけということになり、受付済みにはなりません。還付が早まるわけではないためご注意ください。
国税庁 確定申告書等作成コーナーhttps://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top#bsctrl
還付金の金額は、確定申告書における「還付される税金」になります。2024(令和6)年分以降の確定申告書(第一表)で確認してみましょう。
赤枠の部分が還付される金額となります。なお、今年は定額減税があったため、㊹に「令和6年分特別税額控除(3万円×人数)」の記入が必要です。これにより控除額が増え、還付額も増えることになります。
還付金の受取りは、預貯金口座への振込みが一般的ですが、最寄りのゆうちょ銀行(店舗または郵便局)の窓口に出向く方法もあります。
申告書に申告者本人の名義の口座を記入します。金融機関名、本支店名、預金種別及び口座番号(記号番号)をもれなく書き込んでください。
詳しくは国税庁の資料を確認してください。
『国税庁・国税局・税務署からのお知らせ 国税還付金の受取りは、口座振込をご利用ください。』
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/koza-furikomi.pdf
ゆうちょ銀行の各店舗や郵便局窓口を指定します。金融機関名、本支店名を記入し、預金種別及び口座番号(記号番号)については空白のままにしてください。後日送付されてくる「国庫金送金通知書」を指定した場所持っていくと、還付金を受け取ることができます。身分証明書(運転免許証・国民健康保険被保険者証など)が必要です。
「還付金が振り込まれなかった」という場合には、申告した内容や提出した書類の不足などがあった可能性が考えられます。管轄の税務署に問い合わせをするようにしましょう。
還付金の処理の進捗については、e-Taxにログインして確認することができます。下記の日程を目安に、還付金の処理状況が反映されますので、これを何日か超えて確認できなかったら、なにかしらのトラブルがあったと考えてみてください。
・e-Taxで還付申告を行ってから、2週間程度経過した日
・書面で還付申告を行ってから、1カ月程度経過した日
・還付申請を提出してから、2カ月程度経過した日
メールアドレスを登録しておくと、還付金の処理状況が確認できるようになったタイミングや、更新されたタイミングで通知が送られてきます。詳しくは「還付金処理状況確認について」をご確認ください。
還付金は「払いすぎた税金」ですので、課税対象ではなりません。また、「個人」に対して還付されるものであり、事業には関係ないお金ということになりますので、個人の口座に振り込まれた場合には会計上の処理は不要です。事業用の口座に振り込まれた場合には、「事業主借」の勘定科目で仕分けるようにしましょう。
【事業用の口座に所得税の還付金が振り込まれた】
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
普通預金 | 200,000 | 事業主借 | 200,000 | 所得税還付金 |
還付金は申告に問題がなければ必ず受け取れるものであり、そのために確定申告を急ぐ必要はありません。ですが、やはり現金が手元にあれば、事業や生活においてさまざまな余裕が生まれます。早めに還付金を受け取りたいと考えている方は、確定申告の準備を進めていくようにしましょう。
気をつけたいのが、e-Taxで確定申告をする場合に必要なマイナンバーカード(個人番号カード)です。「去年もできたから大丈夫」と考えてしまいがちですが、マイナンバーカードには期限があります。マイナンバーカードの期限は「発行日から申請者の10回目の誕生日」(18歳以上の場合)ですし、カードに格納されている「電子証明書」はそれよりも短い5年となっているのです。2025年1月現在、オンラインでの更新は不可能であるため、市町村窓口まで出向かなければなりません。いざ送信……と思ったら期限が切れていた、ということがないよう、チェックしておいてください。
以前、実際に「期限が切れていて送信エラーになってしまった」ということがあります。
参考記事:アナウンサー・岸田さんの青色申告チャレンジ第7回【申告書を作成し、送信まで完了?!】https://www.finfin.jp/information/challenge/7_1.html
慌てることなく確定申告を進めることで、ミスも減り、申告漏れなどもなくなります。その結果、還付される金額も増えるかもしれません。少しずつでも準備を進めていきましょう。
1980年鳥取県米子市生まれ。約8年の税理士事務所での勤務経験を経て、2019年東京都府中市で天野大税理士事務所を開業。雇わない・雇われない働き方「ひとり税理士」。 小規模法人やフリーランス・個人事業主の税務を得意とし「ビジネスを通して社会を元気にする」を理念にスモールビジネス専門の税理士として活動中。