確定申告をする・しないに関わらず、どこかで働いてその対価を得ている場合は、その働き方(雇用形態)を確認しておきましょう。そして、あなたは個人事業主なのか、それとも給与所得者なのかを、まずは認識しておく必要があります。
日本では、働き方は大きく2種類に分けられています。ひとつは給与所得者、もうひとつはフリーランス(個人事業主)です。前者は、企業など雇用主との雇用契約に基づいて給与が払われる働き方。後者は、独立した個人としての事業活動によって報酬(事業所得)を得る働き方です。
また給与所得者は、労働基準法などの法律によって、最低賃金や労働時間、休日、有給休暇、労働災害での補償など、さまざまな面で保護されています。一方、フリーランス(個人事業主)は、働く時間や休日も全て自分で決めることができて非常に自由な働き方ができる反面、それらの保護の対象外で、独立した事業主として多くのことが自己責任となってきます。つまり、フリーランス(個人事業主)は、働きすぎて健康を害したり、仕事上で怪我をしたりしても誰も補償してくれず、基本的には病院代は自分で払わなければならないですし、働けない間の収入がゼロになる危険性もあるのです。
どちらの働き方が良いのかは、ライフスタイルに関わる問題ですから一概には言えませんが、それぞれの条件をよく考えて、自分にあった働き方を選びましょう。
給与所得者は、必ず会社などの雇用主と雇用契約を結ぶことになります。雇用契約は、本来でしたら雇用主と雇用される側で取り決めたルールを書面化した「雇用契約書」を双方が承認する形が一番安全ですが、民法上、雇用契約は双方の合意があれば口頭で成立することになっています。ようするに、正式な契約書を交わさなくてもいいことになっているのです。
ただ、その場合も、雇用主は働く人に対して労働条件を書面で明示することが法律で義務付けられています。これを「労働条件通知書」といいます。最低でも、この「労働条件通知書」には、しっかりと目を通すようにしてください。そうしないと、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。
たとえば、美容院でネイリストとして働いているA子さんは、美容院に来るお客さんで希望する人にネイルケアをした際、一回につき美容院から3,000円をもらえるという契約を口頭で結んでいたとします。ですが、報酬は月末にまとめて「給与」の形で払われるため、A子さんは自分が美容院に「雇用」されていると思っていました。
そんなある日、A子さんは美容院に向かう途中で交通事故にあい、1カ月ほど仕事を休むことになってしまいました。すると、美容院での仕事を突然クビになってしまったのです。給与所得者でしたらこのようなケースで解雇されることはありませんが、フリーランス(個人事業主)は、仕事に向かう途中での事故なども補償されません。じつはA子さんの雇用形態はフリーランス(個人事業主)だったのです。思いおこせば、A子さんは一度も美容院から雇用契約書も労働条件通知書も提示されていませんでした……。
このようなトラブルに巻き込まれないためにも、自分の雇用形態をきちんと認識し、納得した上で働くようにしましょう。給与所得を望んでいるのなら、雇用契約書、ないしは労働条件通知書をきちんと提示してもらい、それを確認すること。また、フリーランス(個人事業主)の場合は、雇用契約書や労働条件通知書がなく、そのかわりに業務委託契約書を締結するのが一般的です。この業務委託契約書は、業種・職種によってその内容や文言がさまざまにありますので、契約書を読み込んで内容を把握しましよう。最低でも、業務内容・業務期日(締切など)・業務の対価(報酬)が明示されていることを確認してください。また、多くの場合、万が一のときの補償などについては、自分で交渉しなければなりません。
ところで、給与所得者とフリーランス(個人事業主)では、税金の考え方もまったく違ってきます。給与所得者は、原則毎月の収入から所得税が引かれているため、自分で確定申告をしなくても済むことが大半です。(寄附金控除や医療費控除等を受ける場合は、給与所得者も確定申告の必要があります)。しかし、フリーランス(個人事業主)の場合は自分で所得や所得税の金額を計算し、確定申告をする必要があるのです。
給与所得者とフリーランス(個人事業主)、どちらの働き方を選ぶ際は、このような税務手続、なかでも確定申告にかかる手間や時間のことも考慮に入れる必要があるでしょう。
まとめ
このようにフリーランスは、働き方などをかなり自由に自分の裁量で進められる反面、給与所得者とくらべて労働基準法などの法律に守られる範囲が狭いという特徴があります。また、自分の所得や所得税なども自分で管理し自分で確定申告することが前提です。そのメリットとデメリットを冷静に判断できるようにしましょう。
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