何度も繰り返して言ってしまいがちなセリフですが、1年が過ぎるのは本当に早いものですね。もう年末が見えてきて、なんだかせわしない気持ちになっている方もいらっしゃるのでは……?
さて、「どうすれば年明けの確定申告が簡単になる?個人事業主の疑問に答えます」連載最終回の今回は、「12月の請求書入力で気を付けるべきこと」についてお伝えします。12月だけは他の月と違う処理が発生するのですが、このイレギュラーを頭の中に入れておくだけでも確定申告はとてもスムーズになるものです。
今回の記事から読んだ、という方は、ぜひ第1回から読んでみてくださいね。
第1回の記事はこちら
『第1回:秋冬から準備しておくと違う!まず「片付いていない領収書」を片付ける』
Q. 12月のように「実際に報酬を受け取るのが来年になる」場合は来年の売上として処理するの?
A. 請求書を発行した段階で計上するため、「今年の売上」として処理します。
12月は(支払いターンによってはそれ以前の月でも)「年を超えてから報酬を受け取る」ということが発生します。というのも、請求書を発行すると「後日報酬を支払ってもらう約束」をしたことになるのですが、この約束が発生した時点で計上しなければならないと定められているからです。この約束が、いわゆる「売掛」と呼ばれるものです。「12月の売掛は、売上として計上する必要がある」と覚えておきましょう。
なお、「もともと1年を通じて売掛が発生した時点で計上している」という方もいらっしゃると思います。実はこれが本来の計上方法で、「実現主義(発生主義)」と呼ばれるものです。「実際に報酬が振り込まれた時点で計上している」という場合には、「現金主義」を採用していることになります。これも間違いではありません。
しかし、現金主義では12月に「実際に振り込まれた報酬」と、「これから振り込まれる報酬(売掛)」の両方を計上することになり、会計上の12月の売上が手元にある金額よりも大きくなってしまうことになります。違和感はあるかもしれませんが正しい処理となりますので、必ず12月の売掛も売上として計上するようにしましょう。次の年の1月には「実際に報酬を受け取った」という処理を行うだけなので売上にはなりません。
仕訳は12月と翌年の1月(報酬が振り込まれた月)で次のようになります。
【12月の処理】
請求書を発行した(報酬を支払ってもらう約束をした)
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
売掛金 | 50,000 | 売上 | 50,000 |
【1月の処理】
実際に報酬が支払われた(=売掛金が消滅した)
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
普通預金 | 50,000 | 売掛金 | 50,000 |
「実現主義(発生主義)」と「現金主義」については、こちらの記事も参考にしてください。
アナウンサー・岸田さんの青色申告チャレンジ第5回【事業主勘定科目を理解!実現主義か、現金主義かを選択】
Q. 仕事でもプライベートでも使っているスマホの通信費などは、経費にできる?
A. 仕事での利用を「割合」で説明できれば、「家事按分」して計上できます。
通信費だけでなく、自動車や機器、家賃など、仕事の利用だけに限らないものの支払いも経費にすることができます。その場合、「どの程度の割合を仕事に使うのか」を割合で示し、その分だけを経費計上する「家事按分」という方法を使います。
この割合、あくまでもご自身がきちんと説明することができるだけの根拠が必要です。家賃であれば、事務所利用をしている面積で割り出したり、8時間労働として24時間のうちの約30%としたりするのもよいでしょう。なお、家賃の家事按分は、一般的に20~40%程度といわれています。これを目安に考えてみてください。
仕訳の例) 個人の口座から支払う家賃10万円のうち、3万円を経費計上する
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
地代家賃 | 30,000 | 事業主借 | 30,000 | 事務所家賃 |
「事業のお金を個人から借りている」ということになるため、貸方科目は「事業主借」を使います。
家事按分の具体例については、こちらの記事も参考にしてください。
アナウンサー・岸田さんの青色申告チャレンジ第6回【申告書に直接入力するものとは?】
「どうすれば年明けの確定申告が簡単になる?個人事業主の疑問に答えます」をテーマに、3回の連載をお送りしました。細かな確認と入力がいっぱいの確定申告ですが、「特に重要なポイント」というのはある程度限定されます。しっかりと頭に入れて、少しでも確定申告をスムーズに進めていきましょう。「あ、これ知ってる!」がひとつでもあるだけで、ぐっとやる気が出るものですよ。
個人事業主の確定申告は、会計アプリを使ってスマホで済ませるのがおすすめです。
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